アマゾンに送った「ザ・コーポレーション」のレビューがどうも掲載されそうにないので、せっかくなのでこちらに。
まあこんなレビューじゃ売り上げに貢献しなさそうだし、仕方ないか。


「日本では来年夏公開される予定の映画原作本。
帯には「マイケル・ムーアノーム・チョムスキーミルトン・フリードマンほか豪華論客が多数出演!」とあるが、この本の中にはチョムスキーフリードマンのコメントは掲載されているものの、ムーアにインタビューした形跡はなく、映画のみで公開されるようだ。
ファイザー、ゼネラル・エレトリック、ゼネラル・モーターズ等、主にアメリカの大企業を中心に、企業という存在がいかに自己の利益のみを追求することしかできない存在であるかということを、フリードマンドラッカー等のコメントを引きつつ裏付けていく。
燃料タンクが炎上する危険を知りながらも、訴訟された際の費用と安全策をとった場合の費用対効果では、訴訟された場合の費用のほうが安くつくという理由でそれを放置するGM、予算削減、リストラ等で安全性、環境を犠牲にし、結果爆発事故を起こしたBP等、企業の悪行がこれでもかといわんばかりに実名で書き連ねられている。
全体の論調としてはいささか扇情的すぎるきらいがあるが、読み物としては面白く読んだ。
しかし、企業の社会的責任論の限界を指摘しつつも、なぜ限界があるのかという点が論理的には明らかにされず、「企業は株主のためにある」というこの一点張りで思考停止されている点や、今巷で話題のCSR(Corporate Social Responsibility)にも触れられていない点には不満が残った。
ROEなど株主を重視した経営が日本でも浸透しつつあるが、すでにアラン・ケネディ等によってもこうした経営方法に対する批判が出てきている中、結局人間のコーポレート・ガバナンスに対する楽観的な期待という結論におとしてこんでしまう点などは、もう少し突っ込んだ議論があってもよかったのではないだろうか。」